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『Papa told me』

Posted by AK on 12.2007 漫画   0 comments   2 trackback
きのう見た夢を憶えているか?
生活感に乏しい父娘の、プラトニックな近親相姦


 5年ほど前、新聞の書評欄に『Papa told me』が取り上げられていた。文系インテリたちの間で静かな人気、などと紹介されていて笑った記憶がある。ただのマニア受け漫画に大層な修辞をつけたところで、この手の「世間に違和感を持つ頭のイイ人たちのお話」は、ある種の人々の間でしか流行らないのに。

 主人公は的場知世ちゃんという小学生の女の子で、家族は小説家のお父さんが1人。早くに亡くした母親の記憶はおぼろであり、バベルの塔みたいな高層マンションに父親と2人っきりで住んで「自由で創造的な父子家庭」を目指す、というコメディタッチの連作短編漫画である。

 いわゆるハイソ(靴下のことではない)な父娘の他愛のない物語なのだが、初期のエピソードには父親がパチンコでフィーバーする描写などがあり、庶民感覚へ寄り添う優しさを欠かさない。もっとも、出玉はすべて景品に換えるなど、公序良俗への気遣いも織り込み済みという徹底ぶり。まさに至れり尽くせり、優しさ半ばのバファリンみたいな漫画作品だ。

 連作短編物ということで、各話の間に直接的な物語の流れはない。『アウターゾーン』のミザリィみたいな立ち位置にいる知世ちゃんが、あちこちで見たり聞いたり感じたりしたことを徒然に物語化しているのみである。もっとも、連載後半ではネタ切れを起こしたのか、主人公が1ページしか出てこないエピソードなどもちらほらと描かれるのだが。

 この知世ちゃんという子が、可愛くて賢くて元気でお喋りで繊細でリリカルでファザコンで……という、文字通り、絵に描いたような少女っぷりなのである。作者の英国フリークやアリスのモチーフが度々出てくることからも、ルイス・キャロルのあの童話の根強い影響下にあるのは間違いないだろう。彼女は、澁澤龍彦が言うところの「独身者の願望から生まれた美しいモンスターの一種」そのものだ。

 知世ちゃんには叔母がおり、名を的場百合子という。2人は「知世ちゃん」「ゆりこちゃん」とファーストネームで呼び合うシットコムの登場人物みたいな間柄だ。この叔母というのが、いい歳こいて仕事一筋のキャリアウーマン、「結婚は人間よりも制度との契約」がモットーの独身貴族であるから知世ちゃんも堪らない。的場親子のマンションをしょっちゅう訪れては「ウチの会社の新化粧品! 私が開発担当YO!」などと喧伝して知世ちゃんの熱い視線を受け、あまつさえ「ゆりこちゃんみたいになりたい」などと言わせてしまう罪作りな叔母である。

 当初はこの3人をメインに据え、1話完結の連作スタイルを取っていたのだが、連載を重ねるにつれてその他のレギュラー陣も充実して行く。幸薄メガネ美女の雑誌担当者、かつて市政に携わった隠居老人、どう考えても採算が取れていない道楽カフェの美人双子オーナー、幼少期のトラウマに戯れる売れっ子恋愛小説家、自家中毒気味の政治家の息子……。どうしようもない人たちばかり。掲載誌(今は亡きYOUNG YOU)にふさわしい奇人変人コンテストといった趣だ。ご自身がそうなのかどうかは知らないが、この作者は病人や酔っ払いを描くのが本当に巧い。

 とどのつまり、『Papa told me』は夢を食いつぶして生きる寂しい人々の群像劇なのである。20年近くの連載を通じて、その主題から外れたことは一度もない。

 連載が始まったのは1987年。今と違い、ヒラ社員が末は社長になれると信じられていた愚昧な時代であり、湾岸戦争のワの字もなかった平和な時代であり、意味もなく高騰する不動産価格にふわふわと浮かれていた白痴の時代であった。そこへ来てこの『Papa told me』は、やがて訪れるエゴの社会を先んじた予言的名著と言えるかもしれない。

 この作品の主題とバブル後の日本社会とに共通するのは、個人“主義”と呼べるようなイデオロギーを醸成せずライフスタイルだけを細分化させた結果、エゴを吐く肥満魚と誰かの吐いたエゴを飲み込む雑魚とが大海の上澄みで共存するという、海洋生物学的なビジョンである。「井の中の蛙」と違うのは、両者共に海の広さを知ってはいるが深さは知らず、鳥の餌となるまで空を見ることはない、ということだ。循環するエゴの環に大魚も稚魚も等しく生き、死んで行く。多様化がバラエティ以上の意味を持たず、競争も起こらない反ダーウィニズム的世界。

 この漫画は、そういう狭い生態系の中で繰り広げられるエンドレスな泥仕合という、きわめて末世的なムードを醸している。

 ひと頃、「癒し」というキーワードが各界で流行したことを覚えておられるだろうか。他人のセックスを眺めてマスをかけば気持ちがいいように、誰かの作った夢でシコシコとセロトニンを分泌すれば鬱やストレスが解消してハッピー花びら大回転、という具合のアレを。ご多聞に漏れず、『Papa told me』は「癒し系漫画」のレッテルを与えられ、あまつさえそのポジションに安住すらしていたように思う。

 ただ、癒しだろうが卑しだろうが、夢を楽しむには寝るだけでは足りない。深い眠りを避け、記憶力を研ぎ澄まさなければならない。見た夢を忘れないことが何よりも大切なのだ、という実践的なテーゼが、この漫画をただの夢日記から、それ以上のリアルなものへと脱却させることに成功しているように思う。

 2007年現在、27冊のコミックスと3冊の特別カラー版が集英社から刊行されている。ただし、昨年末に廃刊直前のYOUNG YOU誌上へ載ったいくつかのエピソードは、依然単行本未収録のままだ。作者は最近、アガサ・クリスティーのミステリ物を不定期連載していたと思うが、『Papa told me』のことは綺麗さっぱり忘れてしまったのだろうか……。「コーラス」あたりで読み切り短編として見かけたような気もするが……。

 ここでちょっとググってみた。どうやら活動の場を「別冊コーラス」へと移し、不定期に『Papa told me』の連載は続けているらしい。第28巻の刊行は、そう遠い将来の話ではないようである。

 なお、「PTM通」の一致した意見として、この作品のピークは単行本1巻から5巻ぐらいまでの間であり、安定した面白さが続く15巻あたりを境にマンネリ化したことを付記しておく。20巻をしばらく過ぎたあたりで絵柄の刷新を図るも、往年のファンの間では概ね不評なようだ。

 同タイトルのNHKドラマの話はしない。あのドラマを知らない方は幸せである、と言うに留める。「余計なことを思い出させやがって」と憤慨した古参ファンの方がいれば、苦情は右のメールフォームから受け付ける所存だ。



  『Papa told me』
  1987‐2007年 集英社
  榛野なな恵 著


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Papa_told_me『Papa told me』(パパ トールド ミー)は、1987年からヤングユーにて不定期連載されている榛野なな恵の漫画。テレビドラマ化、ドラマコンパクトディスク|CD化もされている。現在、連載中断中。.wikilis{font-size:10px;color:#666666
Papa_told_me『Papa told me』(パパ トールド ミー)は、1987年からヤングユーにて不定期連載されている榛野なな恵の漫画。テレビドラマ化、ドラマコンパクトディスク|CD化もされている。現在、連載中断中。.wikilis{font-size:10px;color:#666666

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