憂国少女ヘザー・マーティン
「おにいちゃんに会いたいよぅ…」
金髪幼女の涙の訴えに、全米のお兄ちゃんたちがK.O.
今、ヘザー・マーティンちゃんという6歳の女の子が、アメリカでちょっとした有名人らしい。
イラク戦争に従軍した20歳の叔父へのラブソングを熱唱する姿が動画投稿サイトYouTubeにアップされ、おいおいなんだこのカワイコちゃんは、幼児を政治キャンペーンに使うほどリベラルは落ちぶれたのか、などと各方面で波紋を呼んでいる。
Heather Martin - When Are You Coming Home - by Bye2luv
百聞は一見にしかず。上は最も有名な動画で、現時点で200万PVを超えている。「いつになったら帰ってきてくれるの? 戦争なんてすぐ終わるって私に言って。お兄ちゃんに会いたい……」と、達者なジェスチャーを交えつつ情感たっぷりに歌い上げる様は全米を感動の嵐へ叩き込むと同時に、共和党の支持率ダウンへ拍車をかけるには充分すぎたようだ。
この動画は「Bye2luv」というユーザーによってシリーズ化されており、Heather Martinで検索すると、ニュース映像も含めた関連タイトルがズラズラ列挙される。作詞、作曲はヘザーちゃんのママで、伴奏も担当しているようだ。また、ヘザーちゃんの音痴、じゃなくて純真な歌声に感動した多数のユーザーが「お返事動画」も投稿している。変な被り物をつけた奴はやる気があるのだろうか。
動画のタイムスタンプを見て分かる通り、これは昨年末の話題である。2007年5月現在、イラク戦争における米兵の死者数は3000名をマーク、今後も増加見込みだ(米軍が駐留し続ける限り)。金髪幼女をベタ惚れさせた罪作りな男の名をショーン君というらしいが、彼が遥か中東の地で今もなお健在かどうかは知らない。どこかに書いてあるのだろうけれど、私は駅前留学とかしていないので中学英語以上の英文はさっぱりだ。
そもそも私がこの動画を知ったのは、偶然YouTubeの検索窓に「Littlegirl」という卑猥なクエリを打ち込んだからだ。反戦関係のWEBサイトを巡って見つけたわけではないし、だいたい、日本でこの子が話題になっているところをまったく見かけない。
どこかの市長が凶弾に倒れたり、不登校児が母親の首を切って交番に持ち込んだりと、いろいろ忙しいのは分かるが、それにしてもドライすぎやしないか。こんなことでは、鬼畜米人共に「ヘイ、君たち黄色猿はポリティカルな話題に興味がないのかい? ANIMEもいいけどたまには新聞ぐらい読めよHAHAHA〜!」などと煽られても文句は言えまい。
冗談はさて置き、この話題がアメリカの国内で留まっている理由がなんとなく想像できる。インターネットに国境はないと言われるが、それはある意味で完全に間違っているのだ。英文のコンテンツを理解するには、ある程度の英語力が要る。ぶっちゃけた話、言葉の壁が「全世界的なムーブメント」を阻んでいるとも言えるだろう。WEB上で世界同時革命を起こすには、基礎言語をエスペラント語にでも統一しない限り無理かもしれない。
そしてこのヘザーちゃんブームに関しては、イラク戦争に対する各国間の温度差がダイレクトに影響している。湾岸地域に駐留する米兵へ興味を持つのは、同じ米国人だけなのだ。むしろ、「イヤならさっさと帰ってくれば? 誰も頼んでないよ」という声を抑え込まんがため、ブッシュ政権は頑なに増派を推し進めているようにも見える。
だいたい、ヘザーちゃんの動画を見て「感動」した日本人が果たして何人いるだろう。正直なところ、私は居心地の悪さみたいなものを拭いきれなかった。どこかのブログでヘザーちゃんがダコタ・ファニングに似てるなどと書かれていたけれど、とんでもない。この子はジョンベネ・ラムジーだろう。
あの当時、これを映せばスポンサーが喜ぶと言わんばかりに数多の局で垂れ流されていた、ジョンベネちゃんが歌って踊るあの映像。あれを見たときのなんとも表し難い不快感が、ヘザーちゃんのカラオケ動画で今一度よみがえってくるようだ。
また、この一連の動画を単純に「反戦」で括ってしまっていいものかどうか、という疑問も残る。動画の断り書きにあるような、リベラルの陰謀云々という話ではない。あの国の行動パターンはいつも同じだ。他所の国へちょっかいを出し、出先で米兵がバタバタと死に、その惨状をジャーナリズムが伝えて「息子を返せ」コールが巻き起こる……。
そもそもあの国は19世紀以降、1度たりとも本土決戦というものを経験していない。「戦場」はいつだって海の向こうだ。48時間以内に地球上のあらゆる地域へ威力を行使できる立場にありながら、大多数の合衆国民は殺戮の現場を知らない。
究極外交であるところの「戦争」が、あの国では内政の諸問題として片付けられている節がある。外国人の命をダシに、兵士の待遇を改善しろとかレーションの質を上げろとか、衛星中継で息子たちの顔をいつでも見られるようにしろとか、さながらちょっと大きな労働争議といった趣だ。これでは、いたいけな少女の「君死にたもうことなかれ」を見せつけられたところで、いつもの国内向けデモンストレーションと邪推されても致仕方あるまい。
ちょっとここで、米国人たちの高い政治意識を確かめるために、件の動画のコメント欄を斜め読みしてきた。そのいくつかを君チラ的超訳で抜粋してみよう。
「可愛いなあ」
「か、可愛いいいいいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ」
「この子のママは天才だね、いい歌作るよ本当。ヘザータソの声も完璧。ショーンは幸せ者だぜ」
「敢えて言おう! 萌えであると!」
「こりゃすげえ、ヘザータソGJ!@テキサス」
「全米で俺が泣いた」
「おいお前ら! ショーンは戦場の尊い犠牲のひとつに過ぎないんだぜ、他の連中はどうでもいいってのか? でも、この歌はイイな……。なんていうか、すごく……」
「ギザカワユス(^ω^)」
「こいつ誰?」
「ヘザーは俺の嫁」
いっぽう彼女は、こんな歌も披露している。
Heather Martin - God Bless America
周りの大人はどうあれ、彼女のほうがよほど国を想っているのは間違いないようだ。憂国少女……このジャンル流行らないかな?
“When Are You Coming Home” “God Bless America”
唄:Heather Martin
金髪幼女の涙の訴えに、全米のお兄ちゃんたちがK.O.
今、ヘザー・マーティンちゃんという6歳の女の子が、アメリカでちょっとした有名人らしい。
イラク戦争に従軍した20歳の叔父へのラブソングを熱唱する姿が動画投稿サイトYouTubeにアップされ、おいおいなんだこのカワイコちゃんは、幼児を政治キャンペーンに使うほどリベラルは落ちぶれたのか、などと各方面で波紋を呼んでいる。
Heather Martin - When Are You Coming Home - by Bye2luv
百聞は一見にしかず。上は最も有名な動画で、現時点で200万PVを超えている。「いつになったら帰ってきてくれるの? 戦争なんてすぐ終わるって私に言って。お兄ちゃんに会いたい……」と、達者なジェスチャーを交えつつ情感たっぷりに歌い上げる様は全米を感動の嵐へ叩き込むと同時に、共和党の支持率ダウンへ拍車をかけるには充分すぎたようだ。
この動画は「Bye2luv」というユーザーによってシリーズ化されており、Heather Martinで検索すると、ニュース映像も含めた関連タイトルがズラズラ列挙される。作詞、作曲はヘザーちゃんのママで、伴奏も担当しているようだ。また、ヘザーちゃんの音痴、じゃなくて純真な歌声に感動した多数のユーザーが「お返事動画」も投稿している。変な被り物をつけた奴はやる気があるのだろうか。
動画のタイムスタンプを見て分かる通り、これは昨年末の話題である。2007年5月現在、イラク戦争における米兵の死者数は3000名をマーク、今後も増加見込みだ(米軍が駐留し続ける限り)。金髪幼女をベタ惚れさせた罪作りな男の名をショーン君というらしいが、彼が遥か中東の地で今もなお健在かどうかは知らない。どこかに書いてあるのだろうけれど、私は駅前留学とかしていないので中学英語以上の英文はさっぱりだ。
そもそも私がこの動画を知ったのは、偶然YouTubeの検索窓に「Littlegirl」という卑猥なクエリを打ち込んだからだ。反戦関係のWEBサイトを巡って見つけたわけではないし、だいたい、日本でこの子が話題になっているところをまったく見かけない。
どこかの市長が凶弾に倒れたり、不登校児が母親の首を切って交番に持ち込んだりと、いろいろ忙しいのは分かるが、それにしてもドライすぎやしないか。こんなことでは、鬼畜米人共に「ヘイ、君たち黄色猿はポリティカルな話題に興味がないのかい? ANIMEもいいけどたまには新聞ぐらい読めよHAHAHA〜!」などと煽られても文句は言えまい。
冗談はさて置き、この話題がアメリカの国内で留まっている理由がなんとなく想像できる。インターネットに国境はないと言われるが、それはある意味で完全に間違っているのだ。英文のコンテンツを理解するには、ある程度の英語力が要る。ぶっちゃけた話、言葉の壁が「全世界的なムーブメント」を阻んでいるとも言えるだろう。WEB上で世界同時革命を起こすには、基礎言語をエスペラント語にでも統一しない限り無理かもしれない。
そしてこのヘザーちゃんブームに関しては、イラク戦争に対する各国間の温度差がダイレクトに影響している。湾岸地域に駐留する米兵へ興味を持つのは、同じ米国人だけなのだ。むしろ、「イヤならさっさと帰ってくれば? 誰も頼んでないよ」という声を抑え込まんがため、ブッシュ政権は頑なに増派を推し進めているようにも見える。
だいたい、ヘザーちゃんの動画を見て「感動」した日本人が果たして何人いるだろう。正直なところ、私は居心地の悪さみたいなものを拭いきれなかった。どこかのブログでヘザーちゃんがダコタ・ファニングに似てるなどと書かれていたけれど、とんでもない。この子はジョンベネ・ラムジーだろう。
あの当時、これを映せばスポンサーが喜ぶと言わんばかりに数多の局で垂れ流されていた、ジョンベネちゃんが歌って踊るあの映像。あれを見たときのなんとも表し難い不快感が、ヘザーちゃんのカラオケ動画で今一度よみがえってくるようだ。
また、この一連の動画を単純に「反戦」で括ってしまっていいものかどうか、という疑問も残る。動画の断り書きにあるような、リベラルの陰謀云々という話ではない。あの国の行動パターンはいつも同じだ。他所の国へちょっかいを出し、出先で米兵がバタバタと死に、その惨状をジャーナリズムが伝えて「息子を返せ」コールが巻き起こる……。
そもそもあの国は19世紀以降、1度たりとも本土決戦というものを経験していない。「戦場」はいつだって海の向こうだ。48時間以内に地球上のあらゆる地域へ威力を行使できる立場にありながら、大多数の合衆国民は殺戮の現場を知らない。
究極外交であるところの「戦争」が、あの国では内政の諸問題として片付けられている節がある。外国人の命をダシに、兵士の待遇を改善しろとかレーションの質を上げろとか、衛星中継で息子たちの顔をいつでも見られるようにしろとか、さながらちょっと大きな労働争議といった趣だ。これでは、いたいけな少女の「君死にたもうことなかれ」を見せつけられたところで、いつもの国内向けデモンストレーションと邪推されても致仕方あるまい。
ちょっとここで、米国人たちの高い政治意識を確かめるために、件の動画のコメント欄を斜め読みしてきた。そのいくつかを君チラ的超訳で抜粋してみよう。
「可愛いなあ」
「か、可愛いいいいいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ」
「この子のママは天才だね、いい歌作るよ本当。ヘザータソの声も完璧。ショーンは幸せ者だぜ」
「敢えて言おう! 萌えであると!」
「こりゃすげえ、ヘザータソGJ!@テキサス」
「全米で俺が泣いた」
「おいお前ら! ショーンは戦場の尊い犠牲のひとつに過ぎないんだぜ、他の連中はどうでもいいってのか? でも、この歌はイイな……。なんていうか、すごく……」
「ギザカワユス(^ω^)」
「こいつ誰?」
「ヘザーは俺の嫁」
いっぽう彼女は、こんな歌も披露している。
Heather Martin - God Bless America
周りの大人はどうあれ、彼女のほうがよほど国を想っているのは間違いないようだ。憂国少女……このジャンル流行らないかな?
“When Are You Coming Home” “God Bless America”
唄:Heather Martin

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